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パーソナルなコンピュータの漢字事情 (第1回: 漢字ROMと漢字変換)


今ではコンピュータで漢字が表示できるのは当たり前ですが、昔はそうではありません。

グラフィック事情(第1回)に書いたようなCRT以前の時代はもちろん漢字表示などは夢でした。

テレビを使うようになっても文字フォントは6×8か8×8程度ですからまだ無理です。キャラクタジェネレータ(フォント)ROMもアメリカ製がほとんどですからカタカナ表示も一般的ではありませんでした。自分でROMを焼くか、日本のメーカの参入を待つしかありません。

MZ-80KやPC-8001などの国産のパソコンが登場すると、カタカナが使えるようになりました。いわゆる「半角カナ」と呼ばれているものです。濁点・半濁点も1文字のスペースを使うので読みにくいですが、それまでのローマ字よりはマシです。
このとき機種によっては漢字のほんの一部ですが表示できるようになりました。8ビットで表現できる256字のうちASCII・カナを除いた部分に各社が「グラフィック文字」を拡張しました。罫線素片のようなものやハート等の記号に混じってよく使われる漢字が入ったのです。PC-8001では「年」「月」「日」「時」「分」「秒」「円」の7文字、MZ-80ではさらに曜日を表せるように「火」「水」「木」「金」「土」と「生」(「生年月日」「年生」のためだと思います)が加わりました。ただこれらは統一されたものではなく各社勝手なコードだったので互換性はありません。

当時はネットワークはもちろんありませんでしたし、テープやフロッピーディスクもメーカ間の互換性などほとんどなかったのでさほど問題にはなりませんでした。

またフォントサイズも他の文字と同じ8×8なので、頻度とともに単純な字形であることも選択の基準だったと思います。

MB-6890(ベーシックマスター レベル3)ではひらがな表示にも対応しました。8×8では無理があるのでインターレススキャンすることで8×16ドットにしています。文字コードにも空きが無いのでカタカナとひらがなは排他利用だったように記憶しています。

640×200, 640×400程度のグラフィック表示が使えるようになると、オプションで漢字ROM(PC-8001mk2用, FM-7用)が用意されるようになります。これはJIS第1水準までの漢字と非漢字(かなや記号など)のフォントを格納したもので、16×16ドットのもの(パソコン用はほぼこのサイズ)で128kBの容量があります。確か3万円程度だったと思います。当時この容量をメインメモリに展開することはできませんでしたし、フロッピーでは遅かったので仕方ありませんでした。
このROMはテキストの表示回路には接続されていないので、ソフトウェアで読み出してグラフィックとして表示する必要がありました。
また当初は入力方法等何も無いのですべてJISコードを調べて入力します(そのためユーザーズマニュアルの巻末にコード表が掲載されていたものです)。

そのうちソフトウェアでかな漢字変換が実装されるようになります。

実はこの頃、PC-8001mk2用に漢字対応ターミナルソフトを自分で書いて使っていました。その変換方法が代表音訓による単漢字変換でした。
JIS第1水準の漢字は代表音訓(代表的な音読み)の順、0x3021~0x3024は「あ」, 0x3025~0x3029は「あい」, 0x302Aは「あおい」…となっているので、読みとコードの範囲の表だけで変換できるからです。学習もさせないので、使っているうちに何という読みの何文字目というのを覚えてしまってそれなりに使えていました。

製品では単漢字変換に始まり、熟語が使えるようになり、文節を考慮するようになりと進化していきましたが、この辞書も置き場に困ります。大抵はフロッピーディスクでしたが、HC-88などのようにROMで搭載するものもありました。

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