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日本計算機 BUSICOM 162 (分解編 その3)


今回は残りの7枚目から10枚目までの基板を見ていきましょう。

6枚目 表面
6枚目 裏面
6枚目もまたジャンパ線が多いですね。

7枚目 表面
7枚目 裏面
7枚目は片面基板でした。裏面にレジスト膜があるのも初めてです。
でもこの基板で一番目立つのは右側の四角いMEMORY PLANEと書いてあるサブ基板ですよね。

7枚目 コアメモリ
サブ基板を外して撮ってみたのがこれです。左右に配線が伸びていてしかもコネクタではなくハンダ付けされていたので、裏返すことはできませんでした。
これはコアメモリという記憶装置です。ドーナツ状のコアに磁気的に1ビットの情報が記憶でき、配線の本数から考えてこの基板1枚でおそらく16×16=256ビットの容量と思われます。写真下から1組独立して出ている線が読み出し用のセンス線で、残りが縦横16組ずつのアドレス線(書き込み用)と考えると説明がつきます。

7枚目のメイン基板に戻って、コアメモリの左側に並んでいるトランジスタ群はアドレス線のドライバです。コアメモリのアドレス線は正負両方向にドライブする必要があるのでここにあるのは全体の半分だけと思われます。その証拠にアドレス線の半分はカードエッジに接続されています。
コアメモリの右側は読み出し用の回路だと思われます。コアメモリには読み出し動作というのは無く、書き込んだときに内容が変化したことを検出して読み出しとしているので、その検出回路です。それに伴い内容が書き換わってしまうので、内容を保持する必要があるときは再書き込みが必要です。

8枚目 表面
8枚目 裏面
8枚目も片面基板、コアメモリのアドレス線の残りのドライバと思われます。
裏面の(特に中央部の)パターンが面白いですね。

9枚目 表面
9枚目 裏面
9枚目はまたガラスエポキシの両面基板、端子も金メッキになっています。

8枚目と9枚目の間に絶縁シートが入れてあったのでどちらかが高電圧のかかる基板の可能性が高いです。8枚目はコアメモリ関係なので、おそらくこの9枚目がそうなのでしょう。カードエッジも1つおきに使っていたり(だったら未使用端子のパターンも抜けばいいのに)します。ニキシー管関係でしょうか。
数えると16個並んでいるのでダイナミックスキャンの桁ドライバではないかと思います。7セグメントと違って同時に複数点灯することは無いので電流はいらないはずですが高電圧のソース(流し出し)はICでは難しいのでしょう。「0」~「9」のデコーダとドライバはどこだかわかりませんでした。

9枚目 アップ
トランジスタ部分のアップです。

左側のボタンのような形状のは2N4888、PNPのトランジスタです。このパッケージはTO-105と呼ぶらしい。こんな昔のデバイスでもネットで探せば資料が出てくる便利な時代になったものです。
右の東芝の2SC780もTO-92にお皿のついたような形をしていますが、昔から電子工作していた人なら同じ東芝の2SC372なんかを思い浮かべるかもしれません。このパッケージはTO-98と呼ぶそうです。

10枚目 表面
10枚目 裏面
最後の10枚目の基板も片面ですね。トランジスタとダイオードと抵抗ばかりというゆったりとしたもの、詳細は不明です。

10枚を通して使われていたICはST600Aファミリのみでしたが、個数を数えてみると以下のようになります。

型番 機能 1枚目 2枚目 3枚目 4枚目 5枚目 6枚目 7枚目 8枚目 9枚目 10枚目
ST616A Dual 4-Input Expandable NAND Gate 1 2 2 6 1 3 0 0 1 0 16
ST620A Single J-K Binary 0 0 0 6 3 0 0 0 4 0 13
ST629A Single RS/T Binary 1 0 12 0 0 12 0 0 0 0 25
ST670A Triple 3-Input NAND Gate 8 7 4 2 8 2 0 0 0 0 31
ST680A Quad 2-Input NAND Gate 15 9 11 11 13 9 0 2 3 1 74

入力数とか細かいことを無視すると、NANDゲートが421とフリップフロップが38あれば、あとメモリが256ビットあれば電卓ができるのか。いやダイオードが多かったからワイヤードORを多用していてもっと必要なのかもしれませんが。

さてBUSICOM 162についてはこれで一旦終了とします。
キーボードやディスプレイ、電源などは開けてみても面白くなさそうですし、入手時に一度通電して正常に動作しないこともわかっていますので。


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