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パーソナルなコンピュータのグラフィック事情 (第10回: 落穂拾い)


一応今回で「グラフィック事情」は最後の予定です。

前回の「ハイレゾ」以降もいろいろな進化がありましたが、力技で面白くないのと私があまり詳しくないので項目だけ並べておきます。

  1. マルチシンクのモニタが普及
  2. 表示デバイスのCRTからLCDへの移行
  3. 伝送方式のアナログからシリアル伝送(ディジタル)への移行
  4. ワイド画面の登場
  5. ビデオ再生や3Dのアクセラレータ
  6. GPU

それと書き忘れたことがいくつかあるので、最後にそれを書いておきます。

日本のパソコンでよく使われたコントローラには以下のようなものがありました。

型名 名称 主な採用機種 備考
MC6847 VDG (Video Display Generator) PC-6000シリーズ
TMS9918 VDP (Video Display Processor) MSX 出力(NTSC,PAL,色差)や対応DRAMによるバリエーションあり
HD46505 CRTC (CRT Controller) X1, MB-S1 他多数 セカンドソースや改良版が多数存在
汎用性が高くCGAなどPC用ビデオボードでも使われた
μPD3301 CRTC (CRT Controller) PC-8000シリーズ
PC-8800シリーズ
色指定などアトリビュートの扱いが独特
μPD7220 GDC (Graphic Display Controller) PC-9800シリーズ 直線・円弧などの描画機能あり
μPD72120 AGDC (Advanced Graphic Display Controller) PC-H98シリーズ μPD7220の後継だが上位互換ではない
塗りつぶしなど多彩な描画機能あり
V9938 EVDP (Enhanced Video Display Processor) MSX2 TMS9918の改良版 直線・矩形の描画機能や論理演算を伴う矩形領域の転送機能などを持つ
V9958 EVDP II MSX2+ 特殊なカラー圧縮による自然画モードあり

これらの汎用IC以外にゲートアレイ等で実装されることも多かったです。

PC-6001などでは白黒モードで色を付けるテクニックがありました。元々はApple IIで考えられたテクニックだと思います。
1ドットの縦縞を表示するとテレビがカラー信号と誤認して色がついてしまうというもので、一部のゲーム等に使われました。テレビのY/C分離回路がだまされるかどうかなので安定して色がつくわけではなかったようですね。

テレビを改造してRGB信号を注入する件、文献を発見したので下に載せておきます。

色数を求めて」でタイルペイント(閉曲線内をパターンで塗りつぶす)について触れましたが、これでもちょっと変わった手法が使われることがありました。
320×200以上のグラフィックが使える機種では大抵単色でのペイント機能を持っていましたが、タイル(パターン)でとなると使える機種は限られてきます。タイルペイントルーチンを書けばよいのですがこれは意外と面倒な処理です。

輪郭が円とか矩形のように単純ならよいのですが、複雑な形状だと分岐点を記憶する必要があるなど面倒なことになります。速度を考えるとアセンブリ言語で書かざるを得ず(C等のコンパイラ言語はまだ普及していません)、大変だったのです。

そこでまず既存(ROM内)のルーチンで単色(青など)で塗ります。次に画面全体の青をパターンに置き換え(これはペイントと比べはるかに容易です)を行なうのです。絵を描く過程を隠さないソフトウェアが多かったので、このような裏側が見られて面白かったですね。

グラフィック処理用にサブプロセッサを積んだ機種もありましたが、FM-8~FM77のMC6809やFP-1000/1100のμPD7801Gのように多くは汎用プロセッサでした。そんな中、Texas InstrumentsからTMS34010というグラフィックに特化したプロセッサが登場しました。CPUとCRTCを一体にしたようなデバイスで、DRAMコントローラも内蔵しています。汎用プロセッサとしての命令のほか、グラフィックに特化した命令も持っていました。例えばXY座標とリニアアドレスの相互変換や直線描画等です。あまり聞かないデバイスですが、PC用のビデオボードに採用例がいくつかあるようです。

参考文献・関連図書: 
松葉博則(1981)「市販カラーテレビを高解像度モニタ化する」,『トランジスタ技術』1981年6月号,pp.371-377,CQ出版社.

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