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PLLシンセサイザ(その7)


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PLLとしての動作に手こずっているので、リングオシレータVCO単体の動作について先に書いて置きたいと思います。これはCMOSインバータの伝搬遅延が電源電圧によって変化することを利用したVCOです。


これは現在いじっている状態で、以下の周波数可変範囲を調べたときとは若干異なっていますが大差はないと思います。

2つのTC74HC04APのうち上がリングオシレータ、インバータを6段接続してあり1,3,5段を右側のジャンパで切り替えられるようになっています。

左上のTO-92は2SK363、ソースフォロワで上の74HC04のVccをコントロールします。

下の74HC04は5V CMOSレベルへの変換器です。リングオシレータは電源電圧を変化させているので振幅が変化し、そのままでは使いにくいのでAC結合ののちCMOSレベルに変換しています。

例によってD/Aで電圧を変化させて周波数の可変範囲を調べてみました。

1段 700kHz~126MHz
3段 380kHz~43MHz
5段 310kHz~27MHz

これまでの74LS624や74HC4046と比べてかなり広く取れますね。3段なら1MHz~25MHzは余裕をもってカバーできそうです。

発振の周期は遅延時間に比例するので、理論上3段は1段の1/3の周波数、5段は1段の1/5の周波数になるはずです。上限はほぼこれに従っていますが、下限はそうでもありませんね。これ下限は電圧を下げすぎると発振が止まる(TC74HC04APの動作範囲は2V~6Vですが、止まるギリギリ1V程度まで下げています)のが関係しているかもしれません。

1段ならもっと上までと思いたいところですが、MC145157の動作上限が25MHz程度なのでプリスケーラを入れるなり考えなくてはいけません。

他にもインバータICをいくつか用意したので同様に測ってみました。

まずはTC74HCU04APです。

1段 発振せず
3段 540kHz~78MHz
5段 430kHz~50MHz

これはUnbufferedタイプですね。通常の74HC04などは内部が3段構成になっているのに対しこれは1段構成で遅延が少ないので期待していたのですが、1段が動かなかったので残念な結果になりました。3段,5段は74HC04の1段と3段の間くらいですが、これだったら74HC04で十分な気がします。

続いてTC74AC04AP

1段 1.2MHz~140MHz
3段 710kHz~62MHz
5段 560kHz~39MHz

これも上限に期待していたのですが...... 1段があまり伸びていません。これ電圧を上げていくと途中で止まってしまったのでした。しかもノイズが大きいのであまり使いたくないというのが正直なところです。

次はUTCのU74HC14L、シュミットタイプです。

1段 1.1MHz~178MHz
3段 620kHz~62MHz
5段 520kHz~40MHz

設計が新しいからなのか74HCにも関わらず74ACに匹敵する結果となりました。しかも途中で止まらなかったので178MHzという最高値を叩き出しました。

ではどれを使おうかということなのですが......

やはり最初のTC74HC04APかな。当初予定の範囲はカバーできそうですし、もっと上はプリスケーラなど用意しなくてはなりません。

ここまで動いたらPLLとしてもいけるのでは、と考えて試してみたのですがいくつか問題がありました。

  1. VCOの最高周波数になってしまう
    MC145157の上限を超えてしまうと正常にフィードバックがかからなくなりVCOの上限周波数に張り付いてしまう。ループフィルタの出力に何らかのリミッタを設けるか、そもそも上限の低いVCOを使うしかない。
  2. 低い周波数が安定しない
    1MHz程度の低い周波数を設定すると周波数が安定しない。

1.はとりあえず74HC04APの3段か5段では発生しない(MC145157は40MHzくらいまでは動作してる)ので当面は困らないし、解決法も見当がつくのですが、問題は2.の方です。

同じ設定で74HC4046のVCOを載せれば安定していますし、同程度の電圧をD/Aから与えてVCO単独で動かしても問題ないので、電源コントロールのソースフォロワあたりかなとは思うのですが......

参考文献・関連図書: 
野田龍三(1993)「広帯域VCOの電流-周波数特性を調べる」,『トランジスタ技術』1994年1月号, pp.386-387, CQ出版社.
小島昭二(1997)「発振周波数1M~160MHz,周波数のスムーズ可変が可能なPLL発振回路の製作」,『トランジスタ技術』1997年6月号, pp.372-382, CQ出版社.

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