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パーソナルなコンピュータのグラフィック事情 (第7回: 色数を求めて)


640×200, 640×400ドットが実現すると、次なる改良の方向は使える色数の拡大へと向かいます。

  • さらなる解像度の向上には専用モニタが必要で、ハードルが高いこと
  • テレビ放送程度の画像を再現できるほどの解像度を既に達成していること
  • しかし8色という色数では自然画表現にはまったく不足であること

あたりが理由でしょう。

最初はソフトウェアだけでできるタイルが使われました。
当時大きな画像は線を繋げて輪郭を作り、その中を塗りつぶすという手法がよく用いられました。

1画面あたり48kB,96kBという容量はまだ扱いに困る状況だったからです。プログラムより1画面のデータの方が大きい等ということはよくありますし、フロッピーディスク1枚に10画面分程度しか入らないのです。
輪郭と塗りつぶしなら座標情報だけなのではるかに小さいメモリで済みます。

この塗りつぶしは最初は単色で塗っていましたが、パターン(例えば青とシアンの市松模様)で塗ることで擬似的に色を混ぜ合わせるのです。ディザのようなものと思ってもらえればよいです。
東芝のパソピア7はハードウェアでこれを行ない27色中8色と謳っていましたが一般化はしませんでした。

モニタへの信号をR,G,Bの3本だったものをR,G,B,Iの4本に増やして16色に増やすということも行われました。もちろんパソコン本体とモニタがともに対応している必要があります。ただ8色が16色に増えても根本的な解決にはなっていません。

さらにモニタへの信号がディジタルからアナログに変更されました。これでパソコンのD/Aコンバータのビット数を増やせば色は増やせるようになったわけですが、ここでまたメモリ容量の問題が出てきます。例えば640×400ドットで24ビットフルカラーにしようとすると640×400×24=6,144,000ビット=約768kBとなり現実的ではありませんでした。
そこで以下のような方法を単独あるいは組み合わせて必要メモリを減らします。

  1. LUT (Look Up Table)を用いて同時に使える色数を抑える (例えば「4096色中16色」など)
  2. 多色モード時は解像度を下げる (例えば320×200程度など)
  3. D/Aコンバータのビット数を減らす (例えばRGBそれぞれ3ビットの512色など)

この選択には各機種の考え方が現れていました。

いくつか代表的なものを挙げてみます(各機種で色数最大のモード、色数を減らして解像度上げられるものもあります)。

機種 ドット数 色数 備考
PC-9801シリーズ 640×400 16 / 4096 これはアナログRGBが使えるようになった頃の仕様
PC-9821シリーズ 640×480 256 / ? Windows前提でPCに近づけたのか
PC-H98シリーズ 1120×750 256 / 16,777,216 パーソナルとはとても呼べない高価なものでした
X68000 512×512 65536 R:G:B=5:5:5にハイライト1ビット
FM77AV 320×200 4096 オプションでビデオキャプチャ(静止画)可能
R:G:B=4:4:4
FM77AV40 320×200 262,144 オプションでビデオキャプチャ(静止画)可能
R:G:B=6:6:6

FM77AV40ではついに総ドット数より同時に使える色数のほうが多くなりました。LUT(当時はパレットと呼びました)を使わずに出せる色数を「同時発色」と称していましたが、「ドットが足りないから同時には使えないだろ」というジョークがありましたね。


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