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パーソナルなコンピュータの補助記憶事情 (第2回:カセットテープ)


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フロッピーディスクの普及まではオーディオ用のカセットテープが広く使われました。

コンピュータの補助記憶装置として欠点も多いとはいえ、次のように当時の事情によくマッチしていたといえます。

  1. 身近にある装置を流用できたこと
    カセットレコーダはたいていの家庭にあり、専用に購入しても安価でした。
  2. インターフェイスが簡単だったこと
    ハードウェアを最小限にするなら1ビットのポートと少しのアナログ回路のみでインターフェイス可能です。シリアル⇔パラレル変換や変調・復調処理をハードウェアで実装しているPC-8001シリーズでもUSARTとロジックICが数個が追加になっている程度です。
  3. メディアが安価で入手容易なこと
    オーディオ用のテープがそのまま使えるのでこれも問題ありません。私はよく近所の薬局の特売で買っていました。
  4. 容量的にも手頃だったこと
    私がカセットを使っていたのはPC-8001mk2でしたが、細工しなければ600bpsなので46分テープの片面で80kB程度入ります。BASICのフリーエリアは25kB程だったはずなので、テープ1本に少なくとも6つ記録できて、1つ8分以内で読み込めるといったところです。

今なら8分も待ってられないと思いますが、当時のフロッピーの値段を考えるとこの程度は我慢するしかありませんでしたね。

転送速度は機種によってまちまちで、遅いものは300bpsから上は2700bpsくらいでした。もちろん機種間の互換性はありません。

互換性のためにカンサスシティスタンダード・サッポロシティスタンダードといったフォーマットもありましたが、市販のパソコンでは各社独自フォーマットがほとんどです。

ソフトウェアの変更のみのものからハードウェアの改造を伴うものまでさまざまな高速化記事が雑誌に載ることもありました。
末期にはAIWAだったか専用デッキにシリアルポートを使って9600bpsなどというものもありました。

転送速度以外の大きな不満はファイルとしての管理がされないことです。テープのどこに記録されているかは自分で管理し、頭出しをしなくてはなりません。テープの片面には1つだけ保存するようにすれば良い(そのために短いテープも売られていました)のですが、今度はテープの本数が増えてしまいます。
シャープのMZ-80BシリーズやX1シリーズの内蔵デッキ(と専用の外付けデッキ)はソフトウェアから早送り・巻戻し・サーチなどが制御可能になっていました。これで3番目のものを読み込むとか、末尾に保存するとかの操作が容易になりました。
HC-88内蔵のマイクロカセットも同様の機能を持っています。これを活用してテープをディスクのように扱うことが可能になっています。

TEACからはMT-2というディジタルカセットデッキが発売されていました。これはCPUバスに接続する形式だったと思いますが、それなりの転送速度とソフトウェアからの制御が可能でした。かなり高価(10万円くらい?)だったのであまり普及はしていないはずです。テープはオーディオ用と外形は似ていましたが流用はできません。

MT-2などの特殊な例を除いて音声信号で記録することから、テープの代わりにソノシートに入れて雑誌の付録にしたり、テレビの音声多重放送を利用して放送したりと、応用が利いたのは面白かったですね。

参考文献・関連図書: 
「BYTE's Audio Cassette Standards Symposium」,『BYTE』1976年2月号,pp.72-73
千葉憲照「サッポロ・シティ・スタンダードについて」,『トランジスタ技術』1978年12月号,pp.266-272,CQ出版

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