2017-01-23 17:24 — asano
ネタが切れてきたなと思っていたところ、「遺物」と呼ぶにふさわしいものが出てきました。
これは「テレホンピックアップ」と呼ばれていたもの、今では必要ないし事実上使うこともできないものです。名前の通り電話のアクセサリなのですが、何に使うものかわかりますか?
左側の円筒形のものが本体で、φ3.5のプラグ(右側)が付いています。コードの長さは1m程でしょうか。
ピックアップ本体には吸盤がついています。
中はコイルのはずですが、壊さずに見ることはできなさそうなので今回は分解は無しです。
用途が何だったか、わかりましたか?
使い方はこうです。
本体を吸盤で電話機に取り付けます。
どこに取り付けても良いわけではないので、最適な場所を探す必要があります。
次にプラグをテープレコーダのマイク端子に接続します。
そう、これは電話の会話を録音するためのものなのです。
今では電話回線に直接取り付ける録音用の機器がありますが、以前は簡単なことではなかったのです。勝手に機器を取り付けることはご法度でしたし、電話機もモジュラーではなく直接ネジ留めされていることが普通でした。
そんな条件の中、合法的に録音するために考えられたのがこのテレホンピックアップなのです。吸盤で貼り付けるだけならメモをテープで張るのと一緒です。
その後、1980年代の中頃だったと思いますが、基準を満たした認定機器は自由に接続できるようになり、このようなモノは必要なくなりました。
さて法的?な問題はクリアしたとして、技術的にどうしてこれだけで録音できるのでしょうか?
実は昔(自由化前)の電話機というのは基本的に能動部品(真空管やトランジスタなど)無しで作られており、2本の線で送受信するためにトランスが入っていました。トランスは磁気を介して信号を伝えるので信号に応じた磁界が発生します。この磁界は筐体を通り抜けて外部にも漏れているのでこれをコイルで拾うことで音声信号が取り出されるのです。
上で取り付ける場所を探すと書いたのは、この磁界が最も強く漏れている場所を探すわけです。
最近の電話機はトランスを使わず(トランスは大きく、重く、高価なので)に同等の機能を半導体で実現しています。すると磁界が漏れてこないのでこのようなモノを使って音声を取り出すことはできなくなりました。「事実上使うこともできない」と書いたのはこのためです。
使えない・必要ない、まさしく「遺物」です。
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