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HD68P05V07


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珍しいピギーバック形態のマイコン、日立 HD68P05V07 です。

左が HD68P05V07、ROMは内蔵しておらず背中にROMを挿すためのソケットがついています。二段重ねにすることからピギーバックの名があります。

右は上に載せられるROM、日電 uPD2732D です。容量は32kbit (4kバイト)、32Mの間違いではありません。汚れているのはこのROMが中古品で、剥がしたシールの糊が残っているため。


ROMを乗せてみたところ。
ソケットのピンが余っているのはおそらくピン数の多いROMに対応した製品とパッケージを共通化したためではないかと思います。実際、姉妹品にHD68P05M0 という 64kbitの2764対応のものがあり、2764は4ピン多い28ピンです。

ソケットを搭載することから高価なセラミックパッケージが必要となるのになぜこの形態が使われたかということですが、それは当時マイコンに使えるROMに大きな制限があったためです。
現在ではFlash ROMがあり試作から量産までまったく同じものを使用することができますが、まだFlash ROMのなかった当時はマスクROMか紫外線消去のUV-EPROMしかありません。マスクROMは試作や少量生産には使えないので必然的にUV-EPROMを使用することになりますが、このROMをどこに置くかが問題になってきます。

  1. マイコンに内蔵する
  2. Intel 8748 なんかがこの方式です。
    マイコン自体が消去用の窓がついたセラミックパッケージに入っています。現在のように JTAG, SPI のような書き込みはできませんので、書き換えるときはいったんソケットから抜いて専用の書き込み機に挿して書き込みます。この書き込み機はマイコンの種類ごとに対応が必要になるので開発環境にそれなりにコストがかかります。一方、書き込みが済めば基本的にマスクROMのものと同じように使えますので、試作から初期生産まではこれで対応し、ソフトが安定してからマスクROMに移行してコストダウンなどということもできます。

  3. マイコンにバスで接続する
  4. Intel 8035 なんかがこの方式です。
    マイコンの通常のピンに汎用ROMを接続するわけですから、このROM接続用バスにかなりのピン数を食われてしまい(当時は40ピン程度ですからROM接続用に30ピン近くを取られてしまうとI/Oピンがほとんど残りません)外部I/Oが必要になり、汎用CPUに対するメリットが限定的になります。ROMは汎用品ですので書き込み機も汎用のものが使えます。生産途中でマスクROMに移行するのは大変です。(そのまま移行してもあまりコストダウンにならない、外部I/OをROMから取り戻したピンに再割り当てするとプログラム変更になりリスクがある)

  5. マイコンと直接接続する
  6. 本稿の HD68P05 はこれにあたります。
    上1,2のいいとこ取りをしていますが、欠点もないわけではありません。まずパッケージが特殊なのでマイコン自体が高価なものになります。場合によっては物理的な高さが問題になることもあるかもしれません。マスクROMへの移行は容易(というか量産開始とともに移行したんじゃないかと思います)です。

※ここで「マイコン」という語はMicro Controller あるいはワンチップマイコンの意で使用しています。

2016-08-07追記:
ROM内蔵の例としてH8/330を関連項目に載せました。


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