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パーソナルなコンピュータの補助記憶事情 (第4回:フロッピーディスク)


第4回目はフロッピーディスク、OSのライセンスを紐付けるためだけに購入する人がいるくらい安くなりましたが、1980年代中頃まではパソコン本体よりはるかに高価な周辺機器でした。

例えば日本最初期のパソコンの一つPC-8001の定価は168,000円でしたが、純正のフロッピーディスクユニットPC-8031(5.25インチ1Dドライブ×2+コントローラ+電源)の定価は310,000円もしました。多くのユーザがカセットテープを使っていたのも仕方のないことです。

最初のフロッピーディスクは直径が約200mmの8インチと呼ばれるものです。個人用にはあまり使われませんでしたが、5.25インチや3.5インチで「高密度」フォーマットが使えるようになるまでは容量が大きかったのでビジネスを中心に使われました。代表的なフォーマットには以下のようなものがあります。

  • 片面単密(1S) 128バイト/セクタ, FM, 26セクタ/トラック, 77トラック
    128×26×77=256,256バイトと容量は小さいですが、8インチのドライブならどれでも読み書き可能なのでシステム間のやり取りによく用いられました。
    同じ理由でCP/Mなどの配布メディアとしても使われました。自作システムにCP/Mを移植しようとする場合などはまずこれを読めるようにする必要がありました。
  • 両面倍密(2D) 256バイト/セクタ,MFM,26セクタ/トラック, 77トラック
    256×26×77×2=1,025,024バイトと4倍になっています。

他に片面倍密(1D)もありました。これは片面のメカのまま電気的な変更のみで容量が倍にできましたが、両面対応のドライブが普及してからはあまり使われなくなりました。
また片面用のディスケットにも磁性体は両面に塗布されていたのでジャケットに細工して裏返して使った人もいました。

8インチはディスケットもドライブも大きくて扱いづらいので直径を130mmにした5.25インチと呼ばれるものも登場します。代表的なフォーマットを挙げます。

  • Apple II
    詳細は不明ですが100kB程の容量があったようです。
  • 片面倍密(1D) 256バイト/セクタ,MFM,16セクタ/トラック, 40トラック
    256×16×40=163,840バイトの容量があります。冒頭に書いたPC-8031がこのフォーマットでした。
  • 両面倍密(2D) 256バイト/セクタ,MFM,16セクタ/トラック, 40トラック
    256×16×40×2=327,680バイト、通称320kBと呼ばれていました。国産の8ビットパソコンでは一般的なフォーマットで、PC-80S31KPC-8801mk2の内蔵ドライブもこれです。
  • 両面倍密(2D) 512バイト/セクタ,MFM,9セクタ/トラック, 40トラック
    512×9×40×2=368,640バイトの通称360kBのものです。PCで使われたものです。
  • 両面倍密倍トラック(2DD) 256バイト/セクタ,MFM,16セクタ/トラック, 80トラック
    256×16×80×2=655,360バイト、通称640kBと呼ばれたものです。
    トラック幅を半分にしたもので、ヘッドの幅とヘッドの移動量が半分になったドライブを使用します。1トラックおきに読むことで2Dのディスクを読むことが可能ですが、書き込みは保証されていません。
  • 両面高密度(2HD) 256バイト/セクタ,MFM,26セクタ/トラック, 77トラック
    トラック幅は2DDと同じで、回転数が8インチと同一の360rpmになったドライブを使用します。回転数を360rpm/300rpm切り替え可能なドライブも後に登場し、2HD/2DD両用に使用できるようになりました。
    8インチ2Dとまったく同じフォーマットを5.25インチで実現しており、容量も256×26×77×2=1,025,024バイトと同一になります。8インチ2D用のインターフェイスに5.25インチ2HDのドライブを接続するだけで使用可能で、ソフトウェアの変更は必要ありません。これは電電公社フォーマットと呼ばれることもありました。
    データセパレータ, もう1枚のデータセパレータはこのために作成した基板です。
  • 2HC 512バイト/セクタ,MFM,15セクタ/トラック, 80トラック
    512×15×80×2=1,228,800バイトのこのフォーマットは8インチとの互換性を諦めたもので、主にPCで使用されました。
  • 両面高密度(2HD) 1024バイト/セクタ,MFM,8セクタ/トラック, 77トラック
    1024×8×77×2=1,261,568バイトとセクタサイズを大きくすることで容量を少し増やしたフォーマットです。
    PC-9801シリーズのMS-DOS等で使われました。
    トラックを77までに限定しているので8インチ2Dでも使えるはずです。

ちょっと長くなってきたので3.5インチ以降は次回にしようと思います。

参考文献・関連図書: 
斎藤健司(1985)「高密度フロッピ・ディスク・システムの製作」,『トランジスタ技術』1985年1月号,pp.433-446,CQ出版社.

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