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パーソナルなコンピュータの漢字事情 (第4回: スケーラブルフォント)


16×16ドットまでは漢字は読めれば(識別できれば)良いと思われていたのが、24×24ドットくらいから美しさが要求されるようになってきます。美しさを考える余裕が生まれたと言ってもよいかもしれません。
また書体(明朝体・ゴシック体など)やサイズを変えたいという要望も出てきます。

ディスプレイよりプリンタのほうが高解像度を実現しやすいこと、プリントは他人に渡すものであること、といった事情からかプリンタでの対応が先行することになります。

AdobeのPostScriptやCanonのLIPSといったページ記述言語では文字のサイズを自由に変化させることが可能になりました。それまでのフォントが(例えば24×24の)ドットの有無で定義されていた(ビットマップフォント)のに対し、文字の輪郭の座標を持って(アウトラインフォント)いて都度必要なサイズのドットに展開するのです。

CanonのLBP-A404Eでは明朝体のフォントをROMに搭載していて、オプションのROMカードとしてゴシック体や教科書体などが用意されていました。1書体で約4万円ほどだったと思います。
PostScriptプリンタでは標準で明朝体とゴシック体をHDDに搭載しているのが普通(MicroLine 801PSもそう)でした。一部5書体(標準の2書体に加え太明朝体・太ゴシック体・丸ゴシック体)を搭載していたほか、HDDにダウンロードすることもできます。

MacintoshやWIndowsの普及でディスプレイ上でもスケーラブルなアウトラインフォントが一般化していきます。これはもちろんROMではなくHDD上にファイルとして格納されます。これにはディスプレイの解像度が上がったこと、メモリ・HDDの容量が増えたこと、ソフトウェアでフォント処理ができるだけのCPUパワーが得られたこと、ユーザが増えてフォントの価格が相対的に下がったことなどの条件が揃ってきたためです。

問題が無いわけではありません。ディスプレイの解像度が上がったとはいえ、1文字を構成するドットには限りがあります。また文字は小さくてもよいから広い範囲を見渡したいという需要もあります。ドットに合わせて人手でデザインされていたビットマップフォントに比べ、アウトラインからソフトウェアでドットに変換されたものは(特に小さな文字では)潰れたりして読みやすくありません。ヒンティングや小さい文字はビットマップフォントに切り替えるなどの対策が行なわれていますが、十分とはいえないようです。

フォント価格が下がったことでいろいろな書体を使えるようにもなりました。Windowsには数えられないほどの書体が含まれていますし、安価なものが多数売られています。

以前は1書体で数万円はしていました。漢字ROMボードの価格もほとんどがフォントデータの値段でしょう。
それが今では1万円も出せば数十書体も入ったフォント集が買えます。

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