2018-05-20 12:02 — asano
カテゴリー:
今ではロジックICはCMOSが主流になっていますが、私がマイコン回路をいじり始めた1980年代前半頃はそうではありません。汎用ロジックはTTL、マイコンや周辺デバイスはNMOSが一般的でした。CMOSはまだハンドヘルド機器で消費電力を減らしたいといった特別な理由があるときに速度を犠牲にして選ぶものだったのです。
これはNational SemiconductorのMM74C00Nですね。
初期のCMOS汎用ロジックICといえば4000シリーズが有名です。厳密にはRCAがオリジナルのCD4000シリーズとMotorolaがオリジナルのMC14500シリーズがありますが、混用できるので区別する意味はあまりありません。
このシリーズは消費電流が少ないのは良いのですが、マイコン回路には遅すぎます。
Texas InstrumentsのCD4011BのVDD=5V, 25°Cでの値をデータシートから抜粋してみます。
Characteristic | Typ. | Max. | Units |
---|---|---|---|
Quiescent Device Current, IDD Max. | 0.01 | 0.25 | μA |
Propagation Delay Time, tpHL, tpLH | 125 | 250 | ns |
Transition Time, tTHL, tTLH | 100 | 200 | ns |
これではとてもマイコン回路には使えません。
そこで遅延時間を改善したシリーズがいくつか作られ、その一つが上写真のNational Semiconductor MM74Cシリーズです。TTLからの置き換えが目的ですから型番は74シリーズに合わせてあります。さらに74C915のようなオリジナル機能のものがMM74C900番台に追加されました。
上と同様の特性をデータシートから抜粋してみます。
Symbol | Parameter | Typ | Max | Units | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
ICC | Supply Current | 0.01 | 15 | μA | VDD=15V時(5V時の記載なし) |
tpd0, tpd1 | Propagation Delay Time to Logical "1" or "0" | 50 | 90 | ns |
Propagation Delayはだいぶ改善されましたが、LS TTLの15nsと比較するとまだまだです。
東芝もまた独自のシリーズを出していました。これはTC40H000F、型番に「40」を含んでいますが番号体系は74シリーズに準じているので注意が必要です。これもCD4000 dual 3-Input NOR Gate + Inverterではなく、7400 Quad 2-Input NAND Gateの互換です。
Characteristic | Symbol | Typ. | Max. | Units | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
Quiescent Supply Current | IDD | 10-3 | 2.0 | μA | |
Propagation Delay Time | tpLH | 18 | 27 | ns | 入力の片方をHに固定 |
tpHL | 14 | 21 | ns | ||
Propagation Delay Time | tpLH | 13 | 20 | ns | 2つの入力を一緒に接続 |
tpHL | 15 | 23 | ns | ||
Output Rise Time | tor | 26 | 40 | ns | |
Output Fall Time | tof | 16 | 30 | ns |
遅延はLS TTLの倍程度となっています。これならマイコン回路にも使えます。実際にPC-8201などのハンドヘルド機で多用されていました。
MM74CシリーズもTC40Hシリーズもセカンドソースは少なく、74HCシリーズが普及すると置き換えられてしまい生き残れませんでした。
Add new comment