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パーソナルなコンピュータの漢字事情 (第2回: PC-9801の登場)


前回は漢字ROMの登場とかな漢字変換まで書きました。今回はその続きです。

PC-9801ではグラフィック画面ではなくテキスト画面に漢字を表示できるようになりました。これによって漢字を含むテキストを高速で表示・スクロールできるようになりました。
ところで漢字を表示するにはASCII・カナの倍の幅が必要です。幅の違う文字をハードウェアでどう取り扱っていたのでしょうか?
これは実に単純な方式で、漢字は「左半分」と「右半分」の2文字としてテキストVRAMに書き込むようになっていました。左右を正しく組み合わせて漢字を表示するのはソフトウェアの仕事です。

初期のPC-9801のソフトウェアにはバグがあって、画面の右端に漢字が泣き別れるように表示しようとするとおかしな表示になることがありました。

このためPC-9801シリーズのテキストVRAMは漢字コードが格納できるように16ビット幅になっています(上位8ビットは漢字ROMボードに搭載)。必ず左右並べるので8ビット×2文字分で格納することも原理的には可能なはずですが、ハードウェアでやるのは大変だったからでしょう。

PC-9801シリーズは初期のPC-9801とPC-9801Eでは漢字ROMはオプションでしたが、それ以降はJIS第1水準については標準搭載となりました。
それからPC-9801Eからはユーザ定義文字用のRAMも用意されました。グラフィック画面ならソフトウェアで描画するだけなのですが、テキスト画面にユーザ定義文字を表示するためには必要なものです。当初は63文字分でしたが、後に188文字に増やされています。

さらにオプションでJIS第2水準漢字や拡張漢字のROMボードも用意されました。この「拡張漢字」はJIS X 0212やJIS X 0213ではなくNEC独自のもので他機種との互換性はありません。

このように使用可能な漢字を増やす動きの中、逆の取り組みもありました。

同じNECのPC-6001mk2では教育漢字+αの1024文字に絞って搭載されました。ビジネスに使うことが考えにくい機種だったからこその選択でしょう。学習用ソフトウェアを意識したのかもしれません。
オプションでJIS第1水準の漢字ROMもありましたが、あまり使われなかったのではないかと思います。

参考文献・関連図書: 
アスキー出版局テクライト編(1990)『新版PC-9800シリーズ テクニカルデータブック』アスキー.

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