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YD580 1354 はデータセパレータ付きなのか?


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宿題になっていたYD-580 1354にデータセパレータは付いているのか、いないのか?
詳しく見ていきたいと思います。

YD-580 メイン基板
まずはドライブにデータセパレータ回路があるか、細かく見ていきましょう。これはメインと思われる基板です。ここに載っているICの機能を1つずつ確認していきます。

まずIC1 HA16642MPですが、幸いデータシートを見つけることができまして、それによるとRead / Write Circuit for FDDとのことです。機能はヘッドのドライバと読み出しアンプで、データセパレータの機能はありません。
日立の開発者が書いた「磁気ディスク用リニアICシリーズ」という文書のブロック図でもデータセパレータは別にHA16632APというのがあるので、HA16642MPがデータセパレータ機能を持たないのは確かでしょう。

次にIC2 HD7438Pはオープンコレクタ出力の2入力NANDゲートですからこれも除外できます。

IC3 MB74LS02も2入力NORゲートなのでこれも除外します。

IC4 MB62H118には「Y-E DATA」ロゴもあり、汎用品ではなさそうですね。MB62Hxxxというのは富士通のCMOS Gate Arrayだそうなので具体的な動作は残念ながら不明です。

もう一つICっぽく見えるものにμPA2004Cがいますが、これは単なるトランジスタアレイです。

YD-580 ドライバ基板
一応反対側のドライバ基板と思われるものも見ておきましょう。片面基板なのでこちらに載っている可能性は低いと思います。

左側のIC1 M51720Pは売っているところは多いのですが、データシートが見当たりません。

右下のIC2 M51721Lも同じくデータシートは出てこないのですが、こちらは形状から考えてもモータドライバ等の電力用でしょう。

ネットで探していたところ同じYE DATA製の5.25インチ2HDのYD-380のメンテナンスマニュアルが出てきました。それには回路図も載っていて、M51720PとM51721Lがセットでスピンドルモータの速度制御を行っていることがわかりました。

ここまででMB62H118がデータセパレータの可能性は残りますが、ほかのデバイスは白となりました。
MB62H118をこれ以上追っても資料が出てくる可能性は低そうなので方針を変えてコントローラ側にデータセパレータ回路が無いか見ていくことにします。PC-8801mk2の基板はメイン側CPUの回路と区別が難しいのでベースになっている外付けドライブPC-80S31を見たほうが簡単です。それにPC-80S31なら取って置きの資料があります。

坂本俊夫・玉川昌克・山内直(1983)『フロッピディスク活用ハンドブック PC-80S31』秀和システムトレーディング.

これはPC-80S31K (分解編)でコマンドや内部ルーチンについての資料と紹介しましたが、実はもっととんでもない資料が含まれています。それはPC-8031-2Wの全回路図とPC-80S31のシステムソフトウェアのソースコード(逆アセンブルしたものと思います)です。
NECの5.25インチ2D(320kB)の外付けドライブユニットはPC-8031-2W⇒PC-80S31⇒PC-80S31Kと進化していて、時期的にPC-8801mk2のフロッピー周りはPC-80S31とPC-80S31Kの間に当たると考えられます。そこでPC-8031-2Wの回路図を見てみます。

回路図によるとPC-8031-2Wでは74TTLのLS74,LS161等の組み合わせでデータセパレータを構成していることがわかりました。PC-80S31Kの基板にこれらの石が見当たらないことから、2つのカスタムICのどちらかに入っていると考えられます。

実は以前5.25インチ2HDのドライブを繋ぐときにデータセパレータ回路を組んだことがあり、その時は専用ICとアナログフィルタを使用したので今回もそういう前提で見てしまっていました。それでメインボードにデータセパレータ回路らしきものは無いと判断してしまったのです。

ということで結論は、YD-580 1354にはデータセパレータ回路は載っていない(あるいは無効にされている)だろうということです。
これはこのドライブがそのままPCでも使用できるという情報とも符合しています。

参考文献・関連図書: 
坂本俊夫・玉川昌克・山内直(1983)『フロッピディスク活用ハンドブック PC-80S31』秀和システムトレーディング.
HA16642MP/NTデータシート, Hitachi.

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